The 13th Lab. −第13研究室−

仙台白百合女子大学さんで、健康栄養学科2年生むけの授業「地域保健福祉論」の一コマをお借りして、アクティブ・ラーニング型の授業実践をさせていただいた。
管理栄養士を目指す学生さんたちに、「地域」をテーマにした題材を提供し、さらに深い学びや、学ぶことへの意欲を促すのが第一の目的。さらには、COC+の事業協働大学の様々な分野の授業に取り入れられるエッセンスがあることを示すのが第二の目的だ。

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1 地域を題材に考える意味

管理栄養士のコースに限らず、一見地域と関係のない専門の学生にとって「地域を題材に考える」ということに意義を見出すのは自分ではなかなか難しい。今回の授業ではその点について、少し時間を割いて説明した。
要点はふたつ。

ひとつめは、すべての人間の営みに、空間(地理、気候)と時間(歴史、文化)の複雑な文脈が埋め込まれており、それが最もわかりやすく現れるのが地域であるということ。文脈から切り離された対象をどれほど観察しても、世界に対する理解は深まらないということだ。
ふたつめは、多くの文脈から一般化された「一般解」を授業では学ぶが、それを個別の文脈に当てはめた特定の条件下での「特殊解」を自分で構築しなければ知識は使えないということ。一般化と個別化のサイクルを回すことが大人にとっての学びであるということだ。

完全に咀嚼できないことを承知で、こういったことを大上段から語った後、実際の授業に入った。

2 「お雑煮自慢」から地域の文脈を感じる

今回、ご担当の先生にお願いして、学生に事前課題を配布していただいた。
事前課題はふたつ。ひとつは、東北地方の平均寿命データから自分なりの問題を見出し、その原因を考えること。もうひとつは、田舎の「お雑煮」の具材や味つけとその理由を調べてくること。

当日の授業はまず「お雑煮自慢」から。
できるだけ田舎の遠い人同士でグループを作り、それぞれの雑煮の具材や味付け、更にはなぜその具材を使い、その味にしているかを紙に書いて共有した。
ほとんどの学生が東北出身だが、それでも一人ひとり違う雑煮が語られる。
そこに、「食」に埋め込まれた地域の文脈とその多様性を感じ取る機会が生じる。

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そのうえで、東北地域の平均寿命のデータから、それぞれが問題だと感じることと、その原因として考えられることを共有した。
ここで重要になるのは、根拠は求めつつも互いの見方・視点は決して否定せず受け入れるということ。
それが、様々な物の見方を受けとめて自分の考えを多面的なものにするための入り口になる。

続いて、東北地方の健康寿命のデータを提示し、平均寿命データと合わせて問題点を見出し、その原因と考えられることの「あたり」をつける。
その「あたり」が妥当である可能性と、検証するために何が必要かを議論した。

ふりかえりとしては、「管理栄養士としての自分ができること」を考える。
それは、自分自身が持つ知識を地域という文脈の中でどう使うかを考えることになる。

3 改めて地域を扱う意味を考える

教科書で学ぶことは確かに正しいことではある。
しかし、管理栄養士という仕事につくのであれば、正しいことを伝えればそれで良いというものではない。。
地域や一人ひとりの個人が持つ文脈、すなわち歴史であり人生を受けとめてこそ、適切な指導や支援ができる。
また、その中で新しい知恵が生まれてきたりもする。
管理栄養士という文脈に沿えば、地域について学ぶことはそんな意味を持つだろう。
もちろん異なる専門であれば異なる意味が生じる。

地域という文脈と専門性という文脈の交差するところでより深い主体的な学びが生まれる可能性がある・・というのが、今回のような授業を実施する際の仮説だ。
もちろん、専門性という文脈を十分に理解した教員が担当するほうが更に深く学べる機会が増える。
そんな状態にまで持っていくのが自分の役割であり、様々な分野の文脈に合わせた事例を数多く作る必要がある。
なんとも楽しい限りだ。

一般解と特殊解を往復する学びをつくる第13研究室で公開された投稿です。

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