The 13th Lab. −第13研究室−

宮城学院女子大学にて地域協働教育コーディネーター養成講座(入門編)を開催した。
地域協働教育コーディネーターとは地域や地域の企業と連携して教育プログラムを設計・運用・評価し教学マネジメントの推進に寄与する専門的な人材。
私自身が参画している宮城県のCOC+事業におけるCOC+推進コーディネーターがそのプロトタイプに当たる。

1 養成講座の全体像

この講座の設計にあたっては、下表のように、コーディネーターの役割や企業と大学の連携、地域や企業と連携したプログラムの設計、・運用・評価と言った項目ごとに講座を設計している。

A コーディネーターの役割と機能
A-1
コーディネーターの役割と機能
  • 開発期:プログラム設計、企業メリット設計、学習 システムの設計
  • 運用期:モニタリングとプロジェクトマネジメント  支援、各種研修
  • 評価期:取り組みの意味付け、教育効果の評価、プログラムの評価
B 企業と大学との連携
B-1
企業連携プログラムの計画
  • 連携すべき企業の条件
  • 実施目的(企業の目的とカリキュラム上の位置  づけ)の設定と共有
B-2
企業とのコミュニケーション
  • 企業の現状確認
  • 企業ヒアリングの手法
  • 企業の成果目標と大学の教育目標
C 企業連携プログラムの設計
C-1
企業連携プログラムの設計
(座学)
  • 実施目的に沿ったプログラム設計と教育目標設定
  • 教育効果をもたらす環境設定:相互作用、認知的 コンフリクト、形成的評価
C-2
企業連携プログラムの設計
(PBL/インターンシップ)
  • 実施目的に沿ったプログラム設計
  • 教育効果をもたらす設計:仮説検証の環境づくり
  • 具体的な実務内容の設計と目標設定
D 企業連携プログラムの運用
D-1
企業連携プログラムの運用
(座学)
  • 主体的な学習のための協同学習の運営
  • 深い学習のための形成的評価の手法
D-2
企業連携プログラムの運用1
(PBL/インターンシップ)
  • 学生向け事前研修:目標設定、チームビルディング
  • 現場実践:日報等に対するフィードバック
D 企業連携プログラムの運用
D-3
企業連携プログラムの運用2
(PBL/インターンシップ)
  • 学生向け中間研修:進捗確認、目標再設定
  • 学生向け事後研修:総括(プロジェクトのプロセス、成果と学習の確認)、目標設定
D-4
企業連携プログラムの運用3
(PBL/インターンシップ)
  • 企業担当者向け事前研修:受入環境の整備、受入担当者の役割
  • 企業担当者向け中間研修:進捗確認、関係性の 確認、モニタリング手法
  • 企業担当者向け事後研修:企業にとっての成果(事業成果、組織内の変化)
D-5

企業連携の仕組みづくり

  • 企業参加促進の仕組みとツール(書式、マニュアル等)
  • 企業メリットの設計
  • 企業の魅力発信/学生の理解促進
E 企業連携プログラムの評価
E-1
教育効果の評価
  • 教育目的に沿った評価項目の設計
  • 評価の方法(型式、頻度、時期等)
  • 継続的改善の仕組みづくり
E-2
プログラム運営の評価
  • プログラムの質保証基準の設定と評価
  • プログラム運営の体制と手法の評価

今回の講座は C-2 企業連携プログラムの設計(PBL/インターンシップ) に相当する。

2 企業にとっての価値をつくる

企業と連携したプログラムを設計する際には、あえて第一に企業にとっての効果を考える。

企業の課題解決や経営革新にかかる仮説検証のための戦略的なとりくみ

を、機関と資源が限定され、目的、ゴール、仮説が設定されたプロジェクトとして設計する。その際、多くの大学関係者は、学生の教育的効果を考えすぎるあまり、企業にとってのプロジェクトの価値を軽視する傾向にある。しかし、それでは企業との関係性は築けないし、そもそも教育的効果も望めない。この種のプログラムでは

企業の本当の課題をプロジェクト化する

ことが最重要になるのだ。あえて第一に考える所以だ。
そして、企業の本当の課題を見出すためには、その企業のビジョンや戦略を、経営者に寄り添ってともに考えることが必要になる。
もちろんコーディネーターはコンサルタントではないので、経営戦略に対するアドバイスをするものではない。経営者が戦略を構築していくために必要な問いを適切なタイミングで提示するのが重要な役割になる。それをするために企業の戦略構築プロセスを、たとえ頭だけでも理解して置くことが必要だ。

3 学生の教育効果を設計する

第二に考えるのは、やはり学生にとっての教育効果。
ここで、知識やスキルに意識を奪われると、単なる見習いやお勉強型のプログラムになってしまうが、そういったものは学内の方がよほど効果的に展開することができ、企業と連携するメリットは殆どない。せいぜい現場の空気感を知る程度のことになる。

では、どのような教育効果を目指せばよいのか。
一つには、思考行動特性、いわゆるコンピテンシーの強化が挙げられる。
企業との連携プログラムを通して強化されるのは、成果につながる思考行動特性、すなわち①持続的挑戦、②協働/ネットワーク構築といったものがある。これらは通常の大学教育で強化する機会が比較的少なく、卒業研究以降に機会を得るものなので、企業と連携する価値は十分にある。

もう一つは、価値認識特性の強化。自分自身と世界との関係をどのように捉えるかという能力だ。自分や事象を取り巻くネットワークの分析能力などがこれに当たる。大学教育の中では卒業研究を中心とした探究型の科目で獲得することが期待される能力だ。
価値認識特性は、教員などが「○○と△△の間には□□の関係がある」などと伝えても、頭で理解するにとどまり、個別の出来事に適用することはできない。自ら、目に見えない関係性を見出すことが必要になる。そのため、大学という固定された環境から離れることで、より多様な関係性に気づく機会が得られる可能性がある。

地域や地域企業との連携プロジェクトを設計する際には、これらの能力を高めることを意図しておく必要がある。

4 ALL WINの関係づくり

地域や企業との連携プログラムは、大学の意向が強くなると表面的な教育効果のみを目指した「ゆるい」プログラムになることが多い。地域や企業にとっての「本気の現場」での実践プログラムにしなければ意味がない。また、企業側としても、将来に向けた課題解決のためではなく現在の利益の向上のための「安価な労働力」として活用しようとすれば互いになんのメリットもない「ブラックバイト」にしかならない。
地域や企業と大学の双方のニーズを理解し、学生、地域/企業、大学にとってそれぞれ最も望ましい教育プログラムを設計/運用/評価するのが地域協働教育コーディネーター。これは、COC+事業の有無にかかわらず、地域志向を標榜する大学では本気で養成に取り組まねばならない人材ではないだろうか。

地域協働教育コーディネーター養成研修第13研究室で公開された投稿です。

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