人材不足に負けない事業のつくり方

秋田県湯沢市のご依頼でで、地元の経営者向けの連続セミナー「人材不足に負けない事業のつくり方」を開催した。

このセミナーは、毎回経営革新に取り組んでいる中小企業経営者をゲストに招き、事例を紐解きながら自社の経営をどのように進化させるかを考えるという設計で、同じ目線のリアルな事例から考えられるのが大きなポイントだ。

それぞれのゲストの話を取りまとめ、全体を振り返ってみたい

「まずはやってみる」からつくる経営革新

8月24日、「いまある経営資源から考える商品開発戦略」と題して、岐阜県大垣市から大橋量器の大橋博行社長にお越しいただき、商品開発に纏わる話を中心に講演をしていただいた。

枡の需要が質量ともに大きく変化する中で、家業を継いだ大橋さん。
顧客のニーズが多様化する中で、

断らないで特注を受ける、NO!と言わない営業

を始めたそうだ。
そこから、顧客のニーズに応えるように商品展開や事業の変革を進めていった。

ターニングポイントは、工場のガレージ部分を改装して作ったアンテナショップ「枡工房ますや」の開店。
この店を情報収集/発信の拠点として、「大垣の枡」のブランド化に向けて歩み始める。

「大額の枡」をブランド化する過程で、岐阜市のNPO法人G-netから長期実践型インターンシップを受け入れ、様々な商品開発と世界への発信を進めていった。
その中で、五角形の枡「合格し枡」や八角形の枡といった「ユニーク・縁起物」シリーズから、デザイナーとのコラボレーションで「枡」を現代ライフスタイルに合わせた形にデザインした「デザイナー」シリーズ/「酒器」シリーズ、海外のニーズに合わせて進化させていった「海外」シリーズ・・と、商品だけでなくビジネスの形も徐々に進化させていった。
現在はさらなる新市場の開拓を目指しているとのことだ。

地域商社は「ならでは」を生かしてこそ

9月7日、「いまある経営資源で明日から使える販路開拓戦略」と題して、三重県尾鷲市から「夢古道おわせ」の支配人伊東将志さんにお越しいただいた。

伊東さんは、2007年から「夢古道おわせ」で、まちづくりにつながる事業をコツコツと積み重ねてきた。
「誰もがすぐ潰れると言った施設」に小さなイノベーションを次々と起こし、大きな背変革につなげてきたプロセスの裏話を隠すことなく伝えていただいた。

「夢古道おわせ」では「お母ちゃんのランチバイキング」というが名物になっている。
ここは単に料理を提供するための場ではないと伊藤さんは語る。

集落全体が活力を取り戻し、存続できるようになる

ために、様々な仕込みをしている。
それを表現する言葉が

「ならでは」

その土地ではありふれたもの、地域の食文化を、顧客が遠くから来る理由と考え
「素人のお母ちゃんたち」が活躍できる場に価値を見出して創ってきたという。
更には、いつか起こりうる災害時に備えて、5人のお母ちゃんで100人の大人をお腹いっぱい食べさせられるスキルを身につけるといったことも仕込んでいる。

ほかにも

「しらぬまに」、「成功事例の共有」、「たしかに存在している」

といったわかりやすいキーワードと、尾鷲での具体的な事例をもとに、「地域商社」に必要な仕掛けを語っていただいた。

妄想から利益をつくるプロジェクト設計

10月12日、「超高速版!妄想から利益をつくるプロジェクト設計」と第して、前回、前々回のゲストの話をふりかえりつつ、地域企業の経営革新を目指したプロジェクトの設計に取り組んだ。

ここでは、創発的戦略につながるプロジェクトの設計手法について、以下のようなプロセスを紹介した。

1. 妄想を言葉にする!

スタートは、「こんな事できたらいいな」という妄想を言葉にすること。
そもそも妄想するということ自体が難しい場合も多々あるが、今回は意外なほどすんなりとこのハードルはクリア。
「機会があればやってみたいこと」を日頃から考えている人が集まったからかもしれない。

ここで、もうひとつ言語化したいのが、その妄想が実現しそうな気がする理由
多くの経営者は無意識のうちに現実的な足元のことを考えるようになっている。
そのため、妄想を拡げる際にも、多少なりとも実現可能性を意識している。
その実現可能性の源にあるものを言葉にすることで、その源にある自社の「ならでは」を引き出す。

2. 「ならでは」「とっておき」「いいね」

実現可能性の源にあるのは、いわゆるその企業の強み。
通常なら他者と比較して優位性を考えるところだが、地域企業の場合は、その地域の地理的・歴史的文脈を踏まえた特徴、すなわち、「ならでは」「とっておき」を突き詰めることで、他社にない競争優位につなげることもできる。
更に、他人や他地域の人から見た価値、つまり「いいね」の材料を集めることで、自社の強みがより一層はっきり認識できるようになる

3. やってみたいこと、たしかめたいこと

妄想を実現させるためのプロセスを考える中で、

  1. 自社で入手可能な資源で確実にできること
  2. できる可能性はあるが、やってみなければわからないこと
  3. どうにもできそうにないこと

を洗い出す。
1.については問題にならないし、3.については妄想自体を改めることが必要になる。
2.の「できる可能性はあるが、やってみなければわからないこと」については、どうすれば実現可能であるかの仮説検証が必要になる。
そこで、実現のための仮説とそれを検証するための具体的な取り組みを考えることになる。
それがプロジェクト設計だ。
このように切り分けると、はじめての人でも比較的スムーズにプロジェクト化ができる。

プロジェクトは、自らが設定した仮説の是非を検証するもの。
期間としては数週間から数ヶ月程度のものが適当だ。
社内の業務にしろ、新規事業の開発にしろ、仮説検証のためのプロジェクトに落とし込むことで、素早い検証と修正が進む。
それを繰り返すうちに、社内に仮説検証を当然とする風土が育つ。
一つの新規事業を生み出すよりも、それらを生み出し続けることができる組織を創ることこそが肝要だ。

事業において変えないものと変えるもの

11月16日、長野県塩尻市から株式会社山加荻村漆器店代表取締役の荻村実さんにお越しいただき、伝統産業でどのようなイノベーションを起こそうとしているか、現在進行系のお話をしていただき、それを題材にディスカッションを進めた。

荻村さんが扱う木曽漆器は、かつては旅館で用いる「座卓」で大きく売上を伸ばした。
しかし、その後の需要低迷の中で、定まったものを大量生産する形から、顧客からの要望に応じて、その需要にあったものを創るという方向にかじを切った。
塗りの技術を異素材に使う、漆以外の塗料を使う、食洗機対応のものにする・・・等々、様々な挑戦をしている。
それが正解かどうか分からなくても、顧客の要望に対して

ノーをイエスに変える

ということを追求してきたという。

また、インターンシップを活用した取り組みとして

  • 外資系ホテルに漆器を置いてもらい見せることも考え、プロジェクトを進めるうちに、最終的には成田空港で展開することになった。
  • 展開したのは新しい商品ではなく、伝統的な漆器で、年間売上を超える在庫に、価値をつけて売ることを考えた結果、総額700万の売上につながった。

といったことをご紹介いただいた。

荻村さんの話をもとに、参加者の皆さんには、それぞれの事業に関して

  • 何があっても絶対に変えないもの
  • その中でも特に変えられないもの
  • 変えられないものを残すために、自分たちでできること(価値の見せ方)

の三点について考えていただいた。

変えてはいけないものは明確にし、それ以外はどれだけ変えてもいいという自由度で物を考える。
さらに、絶対変えてはいけないものを、もしも手放したらどんな事が起こるかを考えてみると、改めて、なぜそれを変えてはいけないのかがはっきりする。
存外、変えてもよいものになるかもしれない。
自分のこだわりを手放すと、新しいビジネスの種が出てくる場合もある。
その呼び水としての問いだ。

行政主催の講座は、経営計画づくりのような型にはまったものが多いが、今回の湯沢市の講座はそれとは正反対で、地元の経営者のポテンシャルをいかに引き出すかに意識を向けて設計していただいた。
私の方は、経営者のみなさんが自社の事業開発について考える中で、自社の商品サービスの意味付けに関して一段メタレベルを上げ、事業を創発する場を作ることに力を入れるようにした。

これを、地域の中で

経営者同士が自分の会社をよくするために突っ込み会える場

を作る呼び水として、活用していただけると、地域の経営者コミュニティの創発につながる。

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