前回は価格決定の考え方についてまとめてみました。
戦略的な価格設定が長期的な収益の源になる可能性も感じられたのではないでしょうか。
今回は一歩進んで、高収益を獲得するためのしくみである

利益モデル

についてひもといていきます。

1. 利益モデル

利益モデルという考え方はE.J.スライウォツキーとD.J.モリソンの「プロフィットゾーン経営戦略」という考え方の中で示されたもので、要諦を一言で言うと

顧客の全体的なベネフィット(便益)を追求する中で
顧客にとって極めて重要で稀少なものを見いだし
利益を獲得できる経済領域(プロフィット・ゾーン)を作ろう

というものです。
そして、そのプロフィットゾーンを作り出して高収益を実現するしくみを、22種類の

利益モデル

として提唱しました。
22種類のうちには、「ただひたすら倹約する」といったモデルと言うにはちょっと受けとめづらいものもありますが、一方で、自社のビジネスのしくみを変えるヒントになるものもいくつかあります。
22の利益モデルのうち代表的な10モデルを今回と次回の2回に分けて紹介します。

2. 顧客ソリューション利益モデル

多くの場合企業は商品、すなわち製品やサービスを販売しています。
しかし、その商品の競争力が弱くなると、価格競争に巻き込まれ、利幅が下がっていきます。
そこで、お客様の問題解決、その商品を使って何をするのか全体を見て、商品展開を組み直すというのが

顧客ソリューション利益モデル

です。
商品に対してオプションや付属品を提供したり、ファイナンスを提供したりして、単品の売買ではなく

継続的な顧客の問題解決

に貢献することで、顧客のトータルコストを下げることをめざします。

様々な商品とサービスが組み合わさりますので、価格相場も見えにくくなり、より高い価格を設定することもできるようになります。

3. ファイアウォール利益モデル

顧客の成長に伴って高価格・高利益率の商品を提供する考え方を

ファイアウォール利益モデル(または製品ピラミッド利益モデル)

といいます。
このモデルでは、初期顧客に対して低価格・低利益立のエントリー商品を提供することで他社の参入を防ぎ、顧客を囲い込みます。
そして、顧客の成長(商品に対する要求と対価を支払う能力の向上)に伴い、ミドル商品、ハイエンド商品を提供していきます。
アメリカのバービー人形が典型例として紹介されますが、この場合エントリーモデルは1体数ドル、ハイエンドは1体1000ドル以上と大きな差がついています。
エントリーモデルの価格は、まさに市場浸透価格として設定されます。
他社の参入に対するファイアウォール(防火壁)になるわけです。

楽器やスポーツ用品などはこの典型でしょう。
パソコンなどもその傾向があります。
日本だと、「ガンプラ(機動戦士ガンダムのプラモデル)」などは近いでしょうか。
もう少し応用すると、エントリー商品を無料にしてしまい、機能を付加したものをミドル商品、ハイエンド商品として提供すると言うことも考えられます。
利用者が多いことがが大きな収益源になるソフトウェアの世界では普通に見られる光景です。

4. マルチコンポーネント利益モデル

同じ商品を、低価格・低利益立のチャネルで販売して認知を広めつつ、高価格・高利益率のチャネルで利益を得ようというモデルを

マルチコンポーネント利益モデル

といいます。
例えば、スーパーで売っているコーラと自販機で売っているコーラは中身は同じですが価格も利益率も異なります。
顧客のマインドシェアを獲得しつつ高収益のチャネルを維持強化することを考えれば、自動販売機がいかに重要であるか想像がつきます。

この利益モデルはよくできているように見えますが、諸刃の剣にもなります。
それは

一物二価

となって顧客の反発を買う可能性です。
高収益のチャネルでは

何らかの顧客の便益を付加して値段が高い理由を説明する

必要があります。

5. スイッチボード利益モデル

いろいろな商品、人、サービス等を組み合わせて、顧客の要望とすりあわせて、マッチングして提供するやり方を

スイッチボード利益モデル

といいます。
プロジェクトをまるごと引き受けて、全体を調整しながら成果を出す、いわゆるディレクションによって利益を得る方法です。

自社が様々な資源を適切に組み合わせ、顧客の難しいすりあわせの要望に応えられると高い収益につながります。
コンサルタントが専門家のチームを作って経営支援を行うような場合もこれにあたります。
チーム内の取引コストが小さいと、さらに収益を高められる用になります。

6. 利益増殖モデル

特に、コンテンツ系の商品では、その商品を販売してもオリジナルが消えるわけではありません。
一度つくったオリジナルに対して、二次利用が可能になります。
例えば、昔テレビで放映したアニメをデジタルリマスター版として配信したり、BD版として販売したりするのはその典型です。
少しずつ商品に新たな付加価値をつけて、再購入を促すという手法もよく用いられます。
どれだけ売っても、オリジナルが手元に残り、商品も利益もどんどん増殖します。
これを

利益増殖モデル

といいます。

コンテンツビジネスだけの話のように聞こえますが、製造業などでも、

ノウハウなどの広い意味での知的財産

は多々あり、これは別の製造機会で活用することができます。
つまるところ

使い回し

によって効率よく利益を生み出す方法を考えようというのがこの利益モデルのポイントになります。

次回は、もう少し顧客との関係性の中でプロフィット・ゾーンを作る利益モデルについて解説しますのでお楽しみに。