今回からしばらくはお金の話。
言うまでもないことですが、お金はほんと〜〜〜に大事。
お金の話というのは単に数字の話で終わらせるのではなく、

その数字は何によって生み出されているか

と、数字と活動をつなげて考えることが重要です。
ということで、あえて今回は、

そんなの知ってるよ

って言われる基礎の話もまじえておとどけします。


1. 利益の本質を知る

利益とは、顧客にどれだけの価値を、どれだけ効率よく提供したかを表すものです。
顧客は、自分が得た価値にふさわしいと考える対価を支払います。
それを、価値を提供した側から見れば売上となります。

売上を分解すると

①変動費と②限界利益

に分割され、さらに限界利益は

③固定費、④営業利益

に分かれます。

変動費は売上に確実に比例して増減する費用であり、
仕入れ+外部に依頼する費用
と思えば大きな齟齬はありません。
これは、

自社以外の誰かが生み出した価値

という見方もできます。
(これは、えのさんこと株式会社フォスターの榎本計介氏の言葉だったと記憶しています)

売上高から変動費を差し引いたものを限界利益と呼びます。
これはいわば
自社が生み出した価値
です。

この限界利益を生み出すために必要なコストが固定費です。
固定費とは、売上の増減に関係なく発生する費用で

・人件費
・地代・家賃
・水道光熱費
・広告宣伝費
・減価償却費
・その他

で構成されます。

限界利益から固定費を差し引いた残りが営業利益、いわゆる本業による利益になります。
ですから

営業利益を上げるためには固定費を圧縮することが必要だ

と、短絡的に捉えてしまいそうになりますが、それは正しい考えではありません。
実は固定費には

利益を生み出すエンジン

という重要な役割があります。
(この言葉、東天満総合会計事務所の黒崎宏先生の言葉だったと記憶しています)
人件費一つとっても削ればよいというものではなく

利益を生み出すように活用する

ことを考える必要があります。
逆に、どれだけ利益に貢献しているかという点を常に確認しておく必要があります。

では、売上、変動費、限界利益、固定費の関係を見ていきましょう。
その際に最初に確認するのが損益分岐点です。

2. 損益分岐点

横軸に売上高、縦軸に売上高または費用を取ったグラフを考えます。
売上高線とは、売上高と売上高の関係をしますグラフです。
当然、横軸の値と縦軸の値が人数グラフですから、原点を通る傾き1/1(横軸の値が1増えると縦軸の値も1増える)の直線になります。
これに対して売上と限界利益の関係を表す線が限界利益線です。
変動費は売上に比例する費用ですから、限界利益も売上に比例します。
従って、限界利益線は

売上高線より傾きの小さな直線

となり、その傾きが
売上に対する限界利益の割合=限界利益率
を表します。
例えば、変動費の割合が20%の場合、限界利益率は100%-20%=80%になり、限界利益線の傾きも80/100=0.8となります。

固定費は売上にかかわらず決まった金額ですので、売上高と固定費の関係はグラフの上では傾きゼロの直線になります。
これが固定費線です。
限界利益線と固定費線の交わる点では、

限界利益=固定費

となり、それより売上高が大きくなると

限界利益>固定費

となります。

限界利益から固定費を差し引いたものが営業利益ですので、この時点でようやく利益が出ることになります。
このポイントを

損益分岐点

とよび、そのときの売上高を損益分岐tん売上高と言います。
これが、企業が継続する上で、絶対に確保しなければならない売上高ということになります。


シンプルに言えば

図の赤い線が緑の線より上にあるときには利益が出る

ということです。


3. 固定費、変動費と限界利益

先のグラフの応用バージョンを考えましょう。
限界利益率が高いとき、限界利益線の傾きは大きくなります。
図の限界利益線①と②では、①の方が大きな傾きになっています。
これは、限界利益率が高い(変動費率が低い)ことを表すと同時に、②よりも左側、つまり小さな売上高で固定費線を越えることを示します。
限界利益率が高いビジネスは、少ない売上高でも損益分岐点を超え、黒字になるということを表しています。
私のようなコンサルタントは限界利益率が100%近くになりますので、非常に黒字化しやすいビジネスです。
それだけに参入障壁は低く、激しい競争状態(いわゆるレッドオーシャン)になります。
その中で生き抜くにはなにを考える必要があるかについては次回の話としましょう。

応用例の二つ目として、同じ限界利益線で固定費線が異なる場合を考えます。
これは、ひと目でわかるように、固定卑賤が高いと損益分岐点が右へ移動します。
すなわち、高い売上高でようやく損益分岐点を超える、言い換えれば黒字化しにくいビジネスになるわけです。

そのため

固定費は抑えるべきだ

という考え方になるのも、無理からぬことです。
しかし、固定費が大きいビジネスが必ずしもよくないわけではありません。
温泉旅館のように大きな設備投資が必要なビジネスでは、固定費(特に減価償却費)も大きくなります。
しかし、それは、その設備自体が利益の源泉であり、また他社の参入を阻む障壁にもなります。
繰り返しになりますが

固定費は利益を利益を生み出すエンジン

ですので、しっかり利益を生めるようにマネジメントするべきものです。
減価償却が終わった設備をうまく活用するというのもこの考え方によるものです。
その際

固定費の投入は経営者の責任
固定費の活用は管理者の責任

と切り分けておくと、それぞれの役割が明確になります。
詳しくは別の機会に紹介しますが、会社の権限委譲は

利益に対する責任と費用をコントロールする権限の組み合わせ

をセットにして行います。
その際に固定費の投入と活用の責任はわかりやすい例になります。


4. 三つの利益目標

会社にとって望ましいことはうるあげが増えていく増収ではなく、利益が増える増益です。

売上は利益のための手段

と割り切って、利益に全社の意識を向けましょう。

では、どれだけの利益を上げることを目指すべきでしょうか
大きく以下の三つが考えられます。

1.固定費以上の限界利益を出す(損益分岐点を超える)
2.成長のために必要な利益を出す
3.成果配分への原資を稼ぐ

1.の利益は会社が生きていくために絶対に必要な利益であり、見方を変えれば、今目の前の顧客の役に立つために必要な利益です。
2.の利益は、新規事業などに投資して「将来の利益」を生むための戦略費を確保することができる利益です。
残念ながらビジネスの寿命は年々短くなっており、すべての企業が常に変化し続けなければなりません。
そのための投資は会社の成長発展には欠かせないものとなります。
1.と2.の利益の先に、社員により豊かな生活をもたらす成果配分の原資を稼ぐことを目指します。

会社の利益が自らの収入にどのように反映されるかを理解できるほどに財務や会計の知識を社員が持つようになれば、

全社員が利益を追求する会社

になります。
そのために、日頃から

数字(特に利益)で語る

ことを心がけてみてはどうでしょうか。