戦略マップに基づく戦略策定の最後は
学習と成長の視点
です。
これはどのような人材や組織、さらには情報システムを整備するかと言うことを考える視点です。
財務の視点、顧客の視点、プロセスの視点と話を進めて、最期にこの視点がでてくると言うことは
上位の戦略が決まって始めて人や組織、情報システムのことが考えられる
ということを示唆しています。
どんな戦略上の課題があって、それをクリアするためにどんな人や組織が必要になるか
を考えなければならないという意味です。
目次
1. 学習と成長の視点
前々回の復習になりますが、学習と成長の視点とは
①人的資本:社員にどのような知識やスキル、思考行動特性を求め、どのように強化しているか
②組織資本:どのような組織の文化や風土を育てるか、そのために何をするか
③情報資本:適切な経営のためにどのような情報システムを整備するか
・・・特に今後はデータドリブンの経営判断がますます重要になる
の三つのテーマで、「現在の利益」、「将来の利益」のそれぞれについて、戦略目標を考えるものです。
2. 必要な人材の変化
企業活動には、「現在の利益」を出せる人材と、「将来の利益」を出せる人材の両方が必要です。
もちろん、一人の人が両方の役割を果たすことが理想ですが、入社した手の人は人が最初は「現在の利益」、その後成長して「将来の利益」を出せるようになってほしい。
そういうことを見極めて採用できればよいのですが、現実的にはほぼ不可能でしょうし、「贅沢言える余裕はない」という状況もあるでしょう。
従って、結局は社内での育成の問題ということになります。
その際のキモは
戦略実行のプロセスを人材育成/組織開発のプロセスにしてしまう
という点にあります。
一般的に策定された戦略は、中期計画、年度計画、部門の年度計画、個人のアクションプランに落とし込まれ実行されます。
それぞれのアクションプランを粛々と実行し、PDCAサイクル、SDCA(標準化、実行、検証、改善)サイクルを回していきます。
その中で、工夫を積み重ねる余地が生じます。
これがプロセスの改善に貢献し、「現在の利益」を生み出します。
同時に、全社の戦略コンセプトからはずれない範囲で、自由なアクションに取り組む余地を作ります。
例えば部局間横断チームで新規プロジェクトを創って回してみるというのは効果的な方法です。
はじめは、全社的な研修の一環として進めてもよいでしょう(弊社のお客様はよくこれをされています)。
それが「将来の利益」を生む人材や組織作りにつながります。
このように計画外の挑戦によって「将来の利益」を生み出す人材を
創発型人材
とよびます。
3. 創発型組人材
企業活動は、その企業の中期ゴールに向かう基本戦略としての戦略コンセプトにしたがって計画が立てられ、それがうまく実行できるように組織のあり方や行動様式が定められます。
このような戦略実行のあり方を
計画的戦略
と言います。
一方、戦略コンセプトを理解した上で、「このコンセプトなら、こんなこともできるんじゃないのか」という仮説検証を繰り返し、その中で見込みのありそうなモノを全体戦略に取り込んでいくという戦略実行のスタイルを
創発的戦略
と言います。
計画的戦略を粛々と実行しているだけでは突然の環境変化に耐えられないこともあり、創発的戦略をいかに進めるかが企業にとって大きな課題となります。
この創発的戦略がうまく機能するためには、
①現場でさまざまな仮説検証ができ、その中で顧客との関係性を構築できる人材
②イノベーションのプロセスを回し現場の取り組みの中で見込みがあるものを全体戦略に取り入れるように立ち回れる管理者
の二種類の人材が必要になります。
これを意識した人材の確保と育成を戦略の中に組み入れてみてはどうでしょうか。