
前回まで「戦略マップ」の考え方をもとに、戦略を策定する流れについて考えてきました。
しかし、戦略はどれほどよいものを策定したとしても実行されなければただの「絵に描いた餅」で終わります。
したがって策定と同じかそれ以上に戦略実行が重要になります。
今回はその流れを簡単にまとめてみましょう。
目次
1. トップの方針
戦略マップには戦略コンセプトと重点課題(戦略目標)、それらの関係が示されます。
四つの視点を貫く一連の重点課題(戦略目標)群を
重点テーマ
と言い、戦略の筋道をいくつかに分割し、社員が理解しやすい言葉(テーマ)を提供します。
この戦略テーマを理解した上で、各重点課題(戦略目標)を部門、あるいは個人の活動に分解していきます。
さて、重点課題(戦略目標)や重点テーマが示されただけでは、まだ多くの社員にとっては抽象的な話にとどまってしまいます。
各部門各社員が自らの行動計画にまで落とし込めるようになるためには、それぞれの重点課題(戦略目標)に対して
・何が課題解決(目標達成)に最重要なプロセスかか=重要成功要因
・具体的に何が(尺度)どれだけ(目標数値)達成されればゴールに近づいたと判断できるか=KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)
・その達成のために何をすべきか=方策
をセットにして示します。
ただし、方策は最終的に各部門で年度単位で考えますので、トップからは仮の方策として示します。
こうして示される重点課題、重要成功要因、KPI、方策のセットを
トップの(中期)方針
といいます。

2. 方針展開と管理
トップが示す中期方針を年次に分解することで、各部門が具体的な活動を計画できるようになります。
つなり、5年間の中期方針の「最初の一年分」を作成し、各部門に提示するわけです。
ここで提示された年度方針は各部門で吟味され、部門ごとのKPIや方策が提案されます。
トップそれらをすりあわせて年度方針を修正し、最終的なものを全社に示します。

こうして示された年度方針をもとに、各部門は改めて部門内のKPIや方策をまとめて、その年度の部門方針とします。
さらに、ここで示された方策を
いつ、だれが、なにを、どれだけ実行する
という具体的な行動計画(アクションプラン)に落としこみ、進捗を管理します。
これまで経験のないことに取り組む場合にはKPIと方策のセットに対し、週次/月次で活動量を管理し、四半期ごとに計画の妥当性を確認します。
このような管理を方針管理と呼びます。
一方、これまでにも取り組んできたことの効率を高める場合は、方策というよりは、過去の実績を踏まえて何をどれだけ実行すればよいかが概ねわかりますので、その行動の管理に注力します。
これが日常管理と言われる管理の形です。
四半期ごとの方針管理/日常管理は図のような流れで進めていきますが、その際に意識しておきたいのが
できるだけシンプルで、記入することを通して考えや行動を改善できるフォーマット
を提示することです。

私は、一つ一つの方策に対し
行動実績、成果、改善
の三点を記載するフォーマットを用意し、それをスプレッドシート等で共有して週次のミーティングを進めるようにしています。

これによって部下が自分自身をマネジメントできるようになり、プロジェクトの進捗もスムーズになりますので、とても便利なやり方です。
コストもかかりませんのでよかったら試してみてください。
さて、ここまで25回にわたって原稿を書いてきました。
お付き合いいただいたみなさんには心よりお礼申し上げます。
このマガジンはいったん今回で終了ですが、ここで取り扱わなかった組織や人材に関する話、あるいは私自身の本来の専門である創発的戦略に関する話は、別途らためてお届けしたいと考えております。
その際には、ぜひまたお読みいただければ幸いです。