前回に引き続き、利益モデルについて見ていきます。
自社のビジネスをどの利益モデルに近づけるかという視点で見ると、より具体的にイメージしやすいでしょう。

1. スペシャリスト利益モデル

専門性の高い商品を集中して提供するモデルと、的今日する側は

定型化と学習効果

によって、コストダウンと品質向上を両立しつつナレッジを蓄積します。
これによって高利益率で高品質な商品を生み出すことができるようになるというのが

スペシャリスト利益モデル

です。
文字通り、専門家と呼ばれる人たちのための利益モデルと言ってよいでしょう。

ここで重要なのは、

定型化によって、より練度の低い(=時給の低い)人で仕事を回せる

ようになるという点です。
これがないと労働集約型になってしまい利益は増えなくなりますので要注意ですし、逆にこれができるとテレビCMで見かける法律事務所のように、近接分野への展開もしやすくなります。

2.  インストール・ベース利益モデル

導入商品を安価なものにし、その後、顧客が継続使用するために必要な消耗品、関連商品で利益を得るという方法があります。
例えば家庭用のインクジェットプリンターは、本体が安いものでは数千円しかしませんが、インクがそれなりに高価格・高利益率に設定されています。
導入商品が購入されてしまえば、顧客が使い続ける限り長期間にわたって利益が確保できるしくみです。
これを

インストール・ベース利益モデル

と呼び、カミソリと替え刃、EMS(腹筋をブルブルさせるあれ)と粘着パッドのように

専用の消耗品で稼ぐ

ものはすべてこれに含まれます。
普及さえしてしまえば、利益が確保されるわけですから導入商品は市場浸透価格で販売するという考え方です。

ただし、このモデルには

他社が消耗品の代替品を作ると利益が失われる

という大きな欠点もあります。
純正ではない「互換インク」を使っている人も一定数いますが、これはメーカーからする死活問題で、なんとか使えないように様々な工夫を機械の側に凝らしていきます。
この利益モデルは、消耗品の代替が難しい状況でこそ力を発揮するのです。

インストール・ベース利益モデルから派生して、次々と関連商品を提供するという販売後利益モデルというのもあります。
シンプルでかっこいい学習机を提供したら、棚も提供したい、ペン皿も・・・と、いろいろ提供したくなります。
顧客も財布の状況に合わせて、できれば同じレベルをそろえたい欲求が出てくる。
こうしてだんだんグレードを上げていくという手法です。

3. デファクト・スタンダード利益モデル

デファクト・スタンダードとは「事実上の標準」のことです。
様々な規格の商品があるとき、特に、コミュニケーションをとるような商品やソフトウェアを必要とする商品では、多くの人が使うものの方が利便性が高くなります。
そのため、市場シェアが少しでも多いと、そこから加速度的に多くなり、標準化されることがあります。
これがデファクト・スタンダードです。
自社の商品が標準になるようにすることで、大きな利益を得ようとするモデルを

デファクト・スタンダード利益モデル

と呼びます。

この利益モデルでは、どれだけ早く市場シェアを獲得するかが大きな勝負の分かれ目になりますので、当初極端に低い価格で市場浸透を図る場合があります。
たとえば、Microsoft社は自社のオフィスツールやブラウザなどをパソコンにバンドリングすることで市場浸透を図りました。
大手企業の場合は資本力を生かして市場浸透を図ることもできますが、資源の限られた中小企業の場は合、自社で市場を取れるくらいまで、市場を狭めることがポイントです。

4.  ローカル・リーダーシップ利益モデル

特定地域に集中展開して地域内の認知度を高め、同時にオペレーションを集約し、資源を融通することで高収益を生み出すという利益モデルを

ローカル・リーダーシップ利益モデル

と呼びます。
いわゆるドミナント展開によって利益を確保するしくみです。
飲食店などがイメージしやすいところですが、ある程度労働集約性のあるビジネス、例えば地方のビジネスホテルチェーンなども、この方法で利益を高めている例があります。

5. 価値連鎖ポジション利益モデル

バリューチェーンの中の大きなくくりである企画、生産、販売のうち、高い付加価値を生む部分に資源を集中して利益を生むモデルを

価値連鎖ポジション利益モデル

と呼びます。
詳細は「第10回 どこで付加価値を生むか」で紹介した通りですが、成熟市場では

全体をコントロールしやすい部分=顧客接点

に資源を集中するのが、企画と販売という付加価値の高い部分につながりやすく最も高収益を生みます。
逆に発展途上の市場では、生産に注力するのが効果的であったりします。


ここまで代表的な利益モデルを紹介してきました。
多くのモデルが市場浸透価格をうまく活用していることに気づかれた方も多いのではないでしょうか。
価格設定が戦略的であるべきだという理由がおわかりいただけたかと思います。
また、社内で

自社に適した利益モデルはどういうものだろう

というテーマでディスカッションしてみるのも、利益志向の社員を育てるのには有効です。
利益モデルは、活用範囲の広いフレームワークですので、ぜひおさえておいてください。

次回から財務・会計の話に入りますが、配信は1回夏休みをいただいて、8月22日を予定しています。
皆様、よい夏休みをお過ごしください。